今後さらに国内の生産者が減少すれば、残される道は輸入品をメインに
花業界と大きく括って考えると、花屋や市場だけではありません。
当然の如く、その前に生産者という一次産業で花を作る人達の存在があります。
バブル期に急激に増えた「花の需要」に伴って、野菜などの農家の方々が、これからは花を作った方が儲かるらしいという事で移行してきたパターンも多いと聞きます。
その当時に30代~40代だった生産者の方々も現在では60代~70代になってきています。
当然の事ながら、そのまま事業を続けていくには代替わりが必要になります。
しかし、ここで問題が生じます。
子供や後継者の未来を見据えて熟考した場合に
これは花屋にも言える事ですが、大学を出て就職する年齢になった子供たちが、家業である農家を継ぎたいと思うかどうか?
また、将来性を見据えた時に現在のオーナーが自分たちの子供に継がせたいと思うか?
正直、1990年~2000年あたりまであった上昇気流はもう完全に止まっています。
燃料代や肥料代、そして電気代や人件費に加え、消費税まで全てが高くなっているのに、売り先の市場や花屋の需要が停滞している現在です。
社会人としてそれなりの会社に勤めれば、もしその業界が低迷しても転職するという選択がありますが、もし自分で後を継いでオーナーになれば、低迷する業界自体を受け入れつつ、転職すらままならない状態で、現状から未来の経営を模索し、自らの力で切り開いていく必要性が出てきます。
そこまでリスクを負っても、収入は良くて一般のサラリーマン並みか、それ以下というのが花業界の現状です。
そうなってくると、やはり継ぎたくない、継がせたくない…というのが正直なところだと思います。
仮に経営者になって努力をして成功すれば、サラリーマンの数倍の所得を得られるというのであれば、希望もありますが、良くも悪くも親を見て育ってきているので、バブル期に親を見た世代と違い、所得の上限が見えてしまっている感があります。
こうやって国内の産地が無くなっていけば、自ずと輸入品に頼らざるを得ない状況になってきます。
カーネーションなど国産品を凌駕する品質になってきている品種もありますが、まだまだ全体的に見れば格下規格になる物の方が多いのが輸入品です。
また今後、どんどん国産が減ってきて輸入品がスタンダードになる頃には、大手量販店と販売する物が全く同じ物になってしまうという事もありえます。
同品種、同品質の物を使うのであれば、零細企業の花屋が大資本と戦うのは絶対に不可能です。
多少技術力で勝負できても、そもそもの品質は所詮輸入品レベルというのは、差別化していくという意味では厳しいですね。
さらに技術料が取りにくい業種なので、尚のこと難しくなっていくのです。
品質が同じ物なら、よほど技術的な差がない限り、価格の差で大資本が有利になるからです。
母の日のカーネーションの鉢しかり、年末のシクラメンしかり、昔は足りなくなるほどだったものが、今ではイベント直前でも高騰しなくなって久しいです。
シクラメンなどは、昔は各会社が御歳暮代わりや年末の挨拶の時に持っていくので飛ぶ様に売れたものでしたが…。
「花より団子」
やはり景気が停滞すると真っ先に切られるのが花という商品なのですね。
そうなると、必然的にカーネーションやシクラメンの生産者も年々廃業をしていくという事になっていきます。
どうやれば売れるのか?を考えるのも大切ではありますが、景気という大きな流れが変わらない限りなかなか安定して販売していくというのは難しいものです。
生産者目線と花屋目線の違い
優良な生産者は、一つ一つを吟味して作るので量産ができない場合が多く、最高品質の花は量に限りがあります。
そうなると必然的に価格が高騰して、一般の花屋では価格が合わなくなって買えなくなります。
それでは、その場合どちらが儲かるのでしょうか?
生産者目線
価格が高騰すれば生産者も儲かるのでは?と思われるでしょうが、結局、売り上げとしたら
「出荷本数×販売単価」
なので、100本出荷して200円で落札されたとすると
売り上げは 100本×200円=20,000円。
高い品質で花を作り、10本ずつセロファンに包み、それを20本毎に箱詰めし(当然箱代も掛かる)、それを5ケース出荷して売り上げが20,000円です。
そこからJAに10%抜かれ、市場にも10%抜かれ、運賃を支払い、箱代を支払い、ビニールハウスの管理費、土や肥料代を支払い…。
手元にはいくら残るのでしょうか?
10,000円くらいでしょうか?
生産者も苦しいのは分かります。
花屋目線
次に花屋は1本200円(税込み220円)で落札したのですから、200円×20本入=4,000円(税込み4,400円)の支払いをします。
1本
1本200円で仕入れたのであれば、1本400円以上では販売しなければなりません。
しかもその価格設定であれば、10本は売らなければ元も取れない設定だという事になります。
仮に500円、600円で販売した場合、販売本数のノルマは下がりますが、売りにくくなる分、量が出にくくなります。
とにかく原価である4,400円は確実に超える必要がある為、本数が捌ける範囲で一番高額というギリギリの価格設定が必要になります。
この場合、500円で販売して20本売れれば10,000円ですので、このあたりが理想的な感じになるでしょうか?
半分売れ残っても、500円×10本で5,000円にはなるので、何とか原価分は確保できます。
という感じで、花屋という職業はなかなかシビアな商売です。
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