花を使った技術体系として主なものには、日本古来の文化に根付いた「いけばな」、昭和後期に入ってきた「フラワーデザイン」に大別されます。
文化としての花。いけばな業界を語る。
日本の伝統文化「いけばな(華道)」を軸にした侘び寂びの世界であって、「芸術・教育・文化」という点をベースとして、そこに商業がミックスされたという様な独特な世界観を持った業界です。
① 流派(家元制度)の継承
代表的な流派を挙げると
- 池坊
- 草月流
- 小原流
- 龍生派
などになります。
主な活動内容は
- 教室(社中)の運営
- 指導者の育成活動
- 展覧会・イベントなどの定期開催
- 段位・免状の発行
家元を頂点として体育会系的な上下関係や伝統重視の文化感が強め。
② 各講師が個々に運営する教室
- 個人教室(自宅や公民館、カルチャーセンターなどでの指導)
- 企業・学校・外国人向けの定期レッスン。
- オンライン指導(近年増加傾向)
- 副業止まりが多く、本業とまではなかなか難しい。
- 収入源は、直属の生徒数次第となる。
③ 商業施設とのコラボ
- ホテル(ロビーや宿泊の部屋)の装花。
- 宮内庁・イベント・大使館などへの装花。
中でも「草月流系列」はフラワーデザインとの中間的なポジションで、一時期脚光を浴びた「假屋崎 省吾」氏を代表する様な、現代アート寄りで商業案件が多い。
業界の現状・特徴
良い点
- 日本文化として海外へのアピール度が高い。
- 年齢を重ねても続けられる。(実際に高齢の方が多め)
- 昔ながらの花材の供給が難しくなり、自由度が高い流派も増加中
問題点
- 国内の高齢化・全体としての生徒減少が進む。
- いけばな教授になっても収入が不安定。
- 家元制度(体育会系のノリ)が合わない人もいる。
いけばなの業界に向いている人
- 信頼関係を築きながら文化の継承を願える人。
- 教えること、技術や文化を伝えることが苦にならない人。
- 伝統と現代、両方を柔軟に理解できる人。
池坊、小原流、草月流を中心として、そこから派生した各流派のいけばな教室があります。
特徴としては花器や剣山などは通常のお稽古では規定の物を使う為に、掛かる費用は花代と月謝くらいになります。
活ける為につかう備品も剣山や七宝など何度も使いまわせる道具を使用する為、フラワーデザインの様にその都度「吸水性スポンジ(フローラルフォーム)」(開発したオアシス社が有名で、吸水性スポンジをオアシスと呼ぶ事も多い。)を用意したりする必要が無いので、多少はコストが安くなります。
流派によって花を挿すポジションの呼び名が違いますが、基本的には上段、中段、下段の3カ所で構成され、上段部分に枝物、中段部分に花物、下段部分には葉物を使用して構成するケースが多いです。
昔は花嫁修業の一環と認識されていて、景気が良い頃には会社の福利厚生で華道部などもありました。
生け花の先生達も会社から支払われる指導料があったので、やりがいはあったと思います。
現在は高齢になった数名の弟子達と自宅兼お稽古場で、お茶飲みしがてらまったりとお稽古をしているといった感じになりつつあります。
一時期はいけばなを凌駕する勢いがあったフラワーデザイン。
いけばなが花を使った習い事として長年君臨していたところに風穴を開ける勢いで入ってきたのが「フラワーデザイン」でした。
目新しさに加えて、日本の景気も上昇中の真っ只中だった事もあり、若い年代の女性を中心にして、瞬く間に普及していった記憶があります。
中には従来の「いけばな教授」がフラワーデザインを勉強して「フラワーデザインの先生」へと鞍替えしたケースもありました。
そして、女性中心の社会でもある事から、長期間の冷戦が始まります。
どちらが上か、どちらが綺麗か、どちらが優れているか。
結論の出ない戦いが長きに渡って続いていきました。
その関係性のまま時代が進み、いつしか新鮮で先生達の年齢も若かったフラワーデザインの世界も、先生達の高齢化に伴い初期の勢いが衰えてきました。
個人的な勝手な思い込みとしては、長期戦になればなるほどフラワーデザインの方が若干分が悪くなってくる感じがしていました。
探求心のある生徒はドンドンと進んでいきますが、そうでない普通の生徒にとっては、数年間レッスンに通うとマンネリ化してきてしまう傾向にあります。
クリスマス前になるとリース作りとかを数年続けてやると飽きて来るというか…。
この辺りに関しては、いけばなの方がお稽古事として一日の長があるというか、明確な技術に対しては「侘び寂び」で煙に巻ける感じを持っているので長期間続けさせる事ができるカリキュラムを持ち合わせている感じも受けます。
そのうちに段々と資格を取る為に習うという感じになってきて、NFDや国家検定用の練習が中心のレッスンになります。
こうなってくると色彩や感性というより、時間内に規格通りのサイズ、規格通りの挿入角度で仕上げるという練習になります。
これはこれで大切な技術ですが、趣味としてのフラワーデザインというより花屋スタッフ育成に近い感じになってきます。
まあ、これによって趣味としてのフラワーデザインから花のプロになれるのであれば、社会的に見ても良いのかもしれませんね。
高校球児がプロ野球選手になりたい様に。
フラワーデザインを簡単に説明すると
西洋発祥の花の文化で
- いけばなよりも、花を「空間的な装飾」として使うという特徴があります。
- ボリューム感・色合わせ重視。(花を足していくスタイル)
- 完成形(三角、四角、丸)などに向けて花を挿けていく。
- 吸水スポンジ(通称オアシス)を使って制作する事が多い。
- 花束・テーブル装花・ウェディング装花など、いけばなよりも実用的なスタイル。
考え方
- 「きれい」「華やか」「映える」が最優先事項。
- 花を主役にして、葉や枝は別の物をパーツとして組み合わせて完成形に持っていくスタイル。
向いている人
- デザイン・色彩が好きで花を道具としてグッズを作る意識がある。
- イベント会場やショップ内の花を使った装飾に興味がある。
- 型にハマったスタイルよりも、トレンドを追うのが楽しい。
花屋として商売をしていく上では
自分自身が「いけばな」「フラワーデザイン」両方共に教えられる域に達するくらいの技術を持ち合わせておけば申し分ありませんが、少なくとも「いけばな教授」や「フラワーデザインの先生」の話しに対等に追従できるくらいの知識は必要になります。
そうでなければ、正直舐められてしまうという事が往々にしてあるかもしれません。
うちは花の小売りのみで、「いけばな」や「フラワーデザイン」に関しては全然分かりませんのでやっていませんと言えば、そういった、やや気難しい先生方が来店しない店になりますが、後発で花屋を始める場合はそのニッチな面は多少なりとも売上に繋がる可能性はあります。
他の店が拒否する可能性が高いので。
他の店と同様な普通の商品だけを扱っていれば「価格競争」「技術競争」に巻き込まれるので、特殊な知識を身につける事でそれらをかわす事が可能になります。
ただ多少論破できるくらいの知識が無いと、先生方の言いなりになってしまって仕入れロスを増やす結果にもなります。
この辺りの見極めは重要にはなってきますが…。
現在では、このレッスン教材の納品業者が高齢になったり、後継者不足で廃業したりし始めているので、割とどちら(いけばな、フラワーデザイン)の業界でも納品業者探しに奔走しています。
またここからはさらに納品業者が減っていく事が見えているので、ビジネスチャンスの一つとしてはありかもしれません。
特に起業したばかりのショップが一番欲しい「毎月の安定した収入」。
ここからは数十年といった長期での安定は難しいとは思いますが、軌道に乗るまでのサブスクリプション業務の一つの例として知っておいても良いと思います。
但し現在の一人あたりの納品単価は低いので、この価格設定を見直していく必要はあります。


コメント