花屋を始める、または花屋に就職をするにあたり気になるのは年収年商、または給料ではないでしょうか?
「金融業」や「建設業」など世の中には大きく分けて色んな業種があります。
その中で花屋という職業は「小売業」に属します。
同じ花業界でも市場や仲卸市場の場合は「卸売業」となります。
このブログを読まれている方で、純粋に花屋を目指されている方は「小売業」、市場や仲卸市場に働きたいと思っている方は「卸売業」として花業界に携わる事になります。
この「小売業」の方ですが、基本的には他のジャンルに比べて低所得の業界に位置します。
仕入れがあって、粗利から経費を引いてという手順で利益を追求するスタイルの為、仕入れ価格にも左右されやすく、安定して大きな利益を出すのは難しいジャンルとなります。
とどのつまりは、全てが売上総利益(粗利)で決まります。
高所得業界と低所得業界がありますが、その差を決定づけているのが売上総利益(粗利)です。
年間の粗利益がいくら取れるかで、その業界の年収は、ほぼ決まっていると言っても過言ではありません。
よく年商何十億の企業の社長!!
と、さも凄い事の様に紹介されたりしますが、卸売り業などで考えたら売上に関しては大きくて当然です。
10億円の年商で、粗利率が10%であれば粗利1億円。
つまり2億円の年商で、粗利率50%の企業と同格という事になるからです。
5倍も売上が違うのに粗利の金額は同じ。
あとはこの同じ粗利(金額)を残すために何人で稼いだ結果なのか?という事です。
これでザックリとした一人当たりの年収が決まってきます。
大まかに計算してみると
一昔前は花屋の平均年商は3,000万円弱と言われていましたが、最近の統計では2,300万円くらいの様です。
そして、仕入れ価格が高騰してきた現在の仕入れ率は60%くらになり、そうなるとつまり粗利率は40%という事になります。
2,300万円の年商で粗利の金額を割り出すと
2,300(万円)×0.4(粗利率40%の場合)=920(万円)
安定した健全経営を目指す上では、粗利益の半分(50%)の金額が人件費の目安なので、人件費の総額はその半分の460万円になります。
また、自分の経験上2,300万円の年商を出すには自分を含めて2人は最低必要になります。
ただ、完全に2人となるとスタッフの休日、または自分が仕入れに行っている時間や配達時間なども考慮するとなかなか上手く回すのは難しく、他にパートさん一人くらいは欲しくなります。
そうなると当然パート代が発生し、仮にパート代の月額5万円×12ヶ月=60万円と仮定して
460万円(粗利から割り出した人件費の総額)-60万円(パート代)。
これで残りは400万円です。
これを自分(社長)とスタッフの2人で折半すると一人当たり200万円(年)となります。
ただ、年収200万円ではスタッフに辞められてしまう可能性があるので、少しスタッフの給料に色を付けて250万円や300万円を支払ったら、自分の取り分は100万円~150万円となります。
というか、現実問題として社会保険料なども加味すると実際にはこれくらいにはなってしまいます。
つまり、いくら表向きは社長や代表と呼ばれていても、現実的には200万円以下の年収というのが花屋の現状だったりします。
仮に仕入れをもう少し上手くやったとしても粗利45%が関の山。
同じ計算式では2,300万円×0.45(粗利率)=1,035(万円)
1,035万円÷2=約520(万円)
520万円-60万円(パート代)=460万円
460万円÷2(人)=230万円
一人あたり数十万円の年収が増えるくらいでしょうか?
こうやって会社を潰さない様にディフェンスしながらの数字でシミュレーションすると、花屋の年収は200~350万円くらいというのが現実的な数字になります。
この年収は、地方在住で贅沢しなければ食べては行ける金額ではあります。
あくまでも独り身、または結婚して奥さんや旦那さんとのダブルインカムであれば何とかなるでしょう。
ただ、この年収を稼ぐには、給料として貰う金額よりは遥かに精神的にも肉体的にも大変と感じる事が多々あります。
ここでも、花に携わるだけで幸せ、花に囲まれて仕事するだけで幸せ、という気持ちがあるかどうかが分かれ道になると思います。
やり甲斐があって食べて行けるのであれば、それはその人の人生としては幸せという事になるからです。
なので、単に給料の為に働くという気持ちでは、なかなか続けられない職業ではありますし、子育てや住宅ローンなども加味すると、特に男性の職業としては厳しい金額ではあります。
悩ましいのが、かなりの重労働でもあるという事。
そういった金額の面なども含めて、花屋はどちらかと言えば女性のパートさんが主体となる職業ではあるのですが、それにしては割と重労働だというのが悩ましいところです。
先ず、定期的に店内の全ての水桶やバケツの水換えが必要になります。
単純にバケツに水が5リットル入っていれば5㎏以上、10リットル入っていれば10㎏以上の重さになります。
それを一人で何個も運んで、中を洗って水を汲み直し、また元の位置に運び、傷んだ葉などを取って花の手入れをした後に切り口を切り戻してバケツに入れる。
この切り戻す作業も、品種によってはかなりの硬さになるので、相当な握力も必要になります。
可愛い花柄のエプロンを着けて
「いらっしゃいませ~。」
と言いながら、2~3本の小花を手に取って、ニコニコしながらお客様に販売する…なんてイメージして花屋に就職をすると、そのイメージとのギャップにいきなり打ちのめされます。
入社して1週間で辞めるなどというパターンは、割とこのギャップが理由である事が多かったですね。
その他にも、年中「葉緑素」で指や爪は真っ黒、葬儀用の生花の搬入などは完全なる肉体労働です。
会場がほぼ出来上がっている状況で、自分が最後に持ち込んだ生花の「送り主名」が、会場内で一番偉い肩書の人だったりすると、全部の花を移動して一番前に入れなければなりません。
当然、葬祭会館のスタッフさんにも嫌な顔をされます。
また観葉植物なども、品種によっては激重な上、長さも2メートル以上あり、土もこぼせないので搬入は気を遣います。
お客様の希望で、陶器の鉢だったりすると、非力な人なら男性でも運べないくらいの重さになります。
こんなケースを想定すると、どうしても男性スタッフがほしくなるのですが、前述の様に高い給料が払えないので、なかなか募集を掛けても人が集まらないのです。
このジレンマが花屋の悩ましい部分なのです。
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