ブームと共に始め、トーナメントに出る!と息巻いていた友人達も一人減り、二人減りとしていき、結局トーナメントへのエントリーするのは、最終的に自分一人となりました。
まあ、その後に自分がトーナメントを引退してからの方が熱い友人達が増えてきたのは皮肉な事でしたが、この時に、たった一人で見知らぬ世界に飛び込んだ経験は、後々思い返しても非常に有意義なものになりました。
初めてのローカルトーナメント。
まだまだ寒い春先に、初めての、そしてずっと出てみたかったトーナメントにエントリーする事となりました。
会場に着き、周りを見渡すと、やはり誰もが数人の仲間でエントリーしている様です。
日本バスクラブ(NBC)ワッペンのみの人、ジャパン・バスプロ・アソシエーション(JB)のワッペンも着けた人も多く、全体で100名弱エントリーしています。
どこで船を下せば良いのか?
下したボートを一時的にどこに船を置いておくのか?
タックルチェックは誰にしてもらえば良いのか?
試合の手順はどうやるものなのか?
もうあまりにも分からない事が多過ぎて、スタート時間までの間に全部準備が終わるのだろうか?など、もう不安だらけでおろおろしていた記憶があります。
仲間同士で来ている人達は、みんなで代わる代わるボートを下してあげたり、バスボートだったらランチングを手伝ったりと和気あいあいとやっています。
当然仲間内でタックルチェック(船検証・船舶免許証・法定備品・ライブウェルのチェック・生き餌などを持っていないかの検査など)も行っていて、スムーズに進行して行っています。
やっと場所を確保してアルミボートを下して、端の方へ浮かせてロープで係留し、知らない人に
「すみません。初めてなのでタックルチェックして頂けますか?」
とお願いし、誰だこの人?みたいな顔をされながらチェックしてもらい、フライト順番のクジを引いて、やっとの思いでスタート地点に立てました。
もうこの段階で精神的にクタクタでした。
そしていよいよトーナメントがスタートしました。
まだ気温が一桁台の寒さの中でのスタート。
当日は、会場へ向かう途中の田んぼの水が凍っていた事を思い出します。
この状況で釣れるのだろうか?と不安でもありましたが、人一倍練習したという自負心も、それに伴ったある程度の自信もありました。
しかし、初めての経験なので周りの人達の技術の高さも丸っきり分かりません。
どこまで通用するのだろう?と不安でもあり、ワクワクする気持ちもありました。
フライト順は真ん中の後ろくらいだったので、もう有名なエリアには船団ができています。
極寒の状況なのでディープレンジが王道ではあるのですが、船が多い事、またその頃はそんなにライトリグを使っていなかった事もあり、一か八かのシャローでの勝負をする事に決めました。
少し日が昇りかけ、小さな小川からの流れ込みがある小さなスポットに張り付きました。
浅くて流れの緩やかな小川で暖められた水が流れ込む事で、水温が上がりやすいのでは?と思ったからです。
エレクトリックモーターでゆっくりと近づくと、水温計の温度が1度高くなっています。
やはり水温は少し高い!
ルアーはもう、最も得意となっていたラバージグのみで勝負をする事に決め、他のルアーはしまい込みました。
流れ込みへとピッチングでキャストし、ズル引きとシェイキングをひたすら繰り返します。
10数投目くらいの時、シェイキングを止めた瞬間にラインがゆっくりと横に移動します。
「食った!!」
とスイープでフッキングし、38㎝ほどのバスをキャッチしました。
800gくらいの個体だったと思います。
もう、今まで100本単位で散々釣った事のある、いつものサイズ。
普段なら、まあまあのサイズだな…くらいの気持ちでサッサとリリースしている40㎝弱のバスをキャッチし、これほどまでに全身が震える事になるとは思いませんでした。
手が震えて、なかなかフックを外せなかった記憶があります。
やっとの事でフックを外し、ライブウェルに収めると、喜びが全身に込み上げてきます。
今日の状況で、まず1本持っているのは大きなアドバンテージだ!と思いました。
期待が持てたのは、ファーストバイトでラインが横に走った事
少し落ち着いてから、ラバージグのラインを結び替えて再度流れ込みに近づきます。
先ほどのバスは、バイトの出方がラインの横移動だった事で、フッキングしてから場を荒さない様にラインが移動した方へボートごと移動させながらファイトしてキャッチしました。
横に移動するバイトの時は、他にも数匹のバスが居て、咥えたエサを奪われない様に移動する事があるからです。
このタフな状況で、まあまあのサイズがキャッチできたという事は、大きく間違ったエリアではないという証拠です。
そうであれば、その良い環境下にあと数匹のバスをストックしていてもおかしくないと思ったからです。
緊張していた割には、思いの外、冷静に判断していたものだと自分でも思います(笑)
数投目にまたラインが走ります。
立て続けに2本目もキャッチ。
サイズもほぼ同じくらいでした。
これで完全にエリアと、さらに食わせのリズムも分かりました。
ラバージグをフリーフォールさせて、着底後にほぼ止まっているくらいの移動距離での単発シェイキング。
リズムで言えば
「トン………………………トン……………………トン……………………….」
くらいの、ラインを張って時々ビクつかせる程度のシェイキングです。
それでやっとラインで判断できるくらいのバイトが出るのです。
これを掴んだ事で、その後に2本キャッチして、最後の1本はフックアップ出来ず。
合計4本で帰着しました。
ウエイトは3,600g台で、結果は準優勝
帰着してみると思ったよりも釣れていなく、結果としては準優勝でした。
最後のバイトをフックアップできなかったのが悔やまれましたが仕方ありません。
いきなりお立ち台で今日の釣りに関してのインタビューを受けて、訳の分からないまま、色々と答えたのですが、何を話したのか覚えてません(笑)
帰りの車の中で、信号待ちの度に準優勝の盾を眺めては凄く嬉しかった記憶がありますね。

デビュー戦で入賞という幸先の良いトーナメントのスタートになり、その後に他の県のトーナメントも含めて出場回数を重ねる度に知り合いも増えて、どんどんトーナメントに参加するのが気楽になっていきました。
最終的にプロトーナメントへとエントリーし、その後の環境問題やら特定外来生物問題などを経て、取り巻く環境が厳しかった事もあってバスフィッシングへのエネルギーが低下し、トーナメントを引退する事になるのですが、この頃のローカルトーナメント~プロトーナメントまでの経験は、人生の中の中盤(20代~30代)の思い出として凄く思い出に残っています。