先ず粗利益(売上総利益)ですが、単純に売上から原価を引いた金額が粗利益となります。
1,000円(売上)-600円(原価)=400円(粗利益)
そして、粗利益率に関しましては
粗利÷売上高×100
で計算する事ができます。
先ほどの計算で言えば
400円(粗利益)÷1,000円(売上高)=40(%)
この取引の場合の粗利率は40%になり、そして単純に粗利率の反対側(100%ー40%)が原価率になるとも言えます。
この場合で言えば、原価率は60%ですね。
それでは、花屋の粗利率はどれくらいが平均なのでしょうか?
おおよその平均は?と聞かれたら、自分も含めて同業者から聞いた感じから「45%~35%」かな?と思います。
つまり売上が年商1,000万円だと仮定すると、上手くやって450万円の粗利(儲け)。
ロスに繋がる注文が多く、いまいち効率が悪かった場合350万円くらいの儲けになってしまいます。
つまり、売値の半分以上の55%~65%が原価(仕入れ価格)になるという事です。
これは日持ちのしない生もので、しかも食べられない商品と考えると恐ろしくリスキーな数字です。
粗利は経費を引く前の利益ですので、ここから家賃、水道光熱費、燃料費、通信費、交際費などが引かれていく事を考えると、
例として
家賃 80,000円(月)×12(ヶ月)=960,000円
水道光熱費 50,000円(月)×12=600,000円
通信費、交際費 20,000円(月)×12=240,000円
燃料費 30,000円(月)×12=360,000円
これだけで年間2,160,000円の経費が掛かる訳ですから、
4,500,000円(粗利率が高い場合の金額)ー2,160,000円=2,340,000円
これを12ヶ月で割ってみると、月額にして195,000円の所得(利益)という計算になります。
それでは年商1,000万円という金額を逆算してみましょう。
年商1,000万円を12ヶ月で割って、1ヶ月あたりの平均を取ってみると月商は83万円くらいになります。
つまり月に83万円は売らなければ年商1,000万円にはならないという事です。
月の売上830,000円を1ヶ月(30日)で割って一日の売上を算出すると一日の平均売上は27,000円ほど必要になります。
ただこれはあくまでも、一日も休まずに一日27,000円を確実に売り続けた場合であって、一日休めばどこかでその分を取り返すべく、倍の54,000円を売る日を作るか、または一日あたりの平均売上を少しずつ上げなければならなくなります。
仮に粗利率が低い場合のシミュレート(始めた当初は限りなくこちら側の数字が現実的)であれば、
3,500,000円(粗利)-2,160,000円(経費)=1,340,000円
となり、12ヶ月で割ると月額の手取り100,000円強がやっとという事になります。
こちらも同様に最初の例より利益率が低いだけで、年商1,000万円を達成するには、売上が一日27,000円必要なのは変わりません。
そして、この計算は「年中無休」で営業した場合の数字となります。
週に一度休むと仮定すると、1日に必要な売上高は、30日ではなく26日で割る必要があります。
また、花屋で年商1,000万円を出すには、一人では難しいです。
自分一人で全ての業務をこなすとすると、現実的には仕入れに行く時間も必要になりますし、当然休日も必要になります。
例えば仕入れに関しては、営業が始まる時間よりも前に仲卸で買ってくる事が可能であれば解決しますが、この仕入れ方法だと限りなく粗利35%の方のパターンになります。
つまり月給100,000円のパターンです。
仲卸市場は、必要最低限に近いロット数で買う事が可能ですが、全ての商品の金額に何割かの買い付け手数料が加算されているからです。
また実際には、休日を取った日の売上はゼロですし、始めたばかりのショップでは暇な月は一日の売上がゼロなんて日もありますから、どんどんハードルは上がっていきます。
一日店を開けていても売上がゼロであれば、一日休んだのと同じ事になるからです。
さらに一日の売上を確保する為には配達業務も必要になってきますので、年商1,000円をクリアする為にはバイトやパートさんを雇う必要性が出てきます。
粗利35%のパターンでは月額100,000円ちょっとの手取りなのに、そこからバイト代、パート代を支払ったとしたら??
自分の取り分はいくらになるでしょうか?
1ヶ月間、頭と体をフル稼働させてこれだと心が折れてしまいますよね?
しかし、これが年商2,000万円、3,000万円となってもずっと比例して続きます。
何故なら?
粗利率が変わらないからです。
花業界には多く買うと安くなるというスケールメリットが皆無なのです。
むしろ数を揃えてやるから高く買え!と言わんばかりに注文価格となり、本当に仕入れ値が高くなります。
確かに年商3,000万円くらいになってくると、セリでの箱買いで仕入れても売り切る事ができたり、スタッフが増える事で仕事の効率が上がったりといった部分は出てきます。
しかし、それ以上になってくるとまた効率の悪い金額帯があったりするので、効率の良い年商のラインを探す必要性が出てきます。
筆者自身、過去のピーク時は1億2千万くらいの年商でやっていた事があるので、これに関しては痛いほどに感じていました。
お金を残すコツとしては、もう一人くらいほしいけど入れないで頑張るくらいが良いのですが、スタッフが3名とかの状況でこれをやると、後々に全体で疲弊してしまうのが悩ましいところです。
粗利を上げるには、「より安く買って、より高く売る」事が最短の方法なのですが、安く買える物は粗悪品も多く、それを高く売るにはアレンジメントなどの様に短く使う加工品を大量に販売できる必要性があります。
それであれば、茎が細い、曲がっている、葉が痛んでいる…等の花を使って制作も可能になりますが、やはり粗悪な物は日持ちも悪いので長い目で見るとあまり良くない事になりますね。
もう一つの方法は、良い物をそれなりの値段で仕入れて、さらにそれを高く売る、つまり「高く買って、より高く売る。」しかなくなります。
ただ、余程の付加価値が無い限り、生活必需品ではない「花」という商品に常にそこまでの金額を出す顧客がどれだけいるかに掛かってきます。
結婚式や喜寿、米寿のお祝いなどの特別な日以外は、なかなか難しいのが現状です。
どのレベルの商品を扱って商売をするのか?
土地柄、立地場所、顧客層や顧客の年齢などを踏まえて考えていく必要があります。